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The Japanese Society for Experimental Mechanics
日本実験力学会
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2023年度日本実験力学会学会賞表彰 選考結果報告

2023年度日本実験力学会学会賞受賞者が選考委員会において決定しました.2023年度総会(2023年8月30日,和歌山城ホール)において発表を行い,受賞者には表彰状と記念のメダルを送付いたしました.

(敬称略)
特別賞 (功績賞) 1件

松田 浩(長崎大学名誉教授/長崎大学特任研究員(特定教授))

授賞理由:松田浩氏は土木工学の中でとくにインフラ維持管理に関わる分野において顕著な業績を有している.特に光学的計測手法を用いた実用的計測法の開発や技術の建設工学分野への普及と実用化に関して,多くの業績がある.さらに長崎大学工学部インフラ長寿命化センターを発足させてそこを拠点にして,道路インフラの維持管理技術者養成を行うなど,人材育成に関する貢献も大きい.
 本会においては,2008年度から2022年度にかけて評議員を務め,その間,2009年度から2019年度にかけては,特任理事(年次講演会),特任理事(会員増強),理事(企画),理事(顕彰),論文審査委員長,副会長を歴任している.また,2010年8月の年次講演会と2014年の分科会合同ワークショップの実行委員長を務めている.さらに,インフラ維持管理技術分科会を発足させてその主査として積極的に活動を行い,2012年,2017年,2021年に学会誌の特集号を企画・編集している.その分科会の活動においても,産官学連携について積極的に行い,企業との共著論文も多数ある.本会会誌への論文や解説記事も多数あり,技術賞を2018年に受賞されている.
 他学会においても,土木学会のコンクリート委員会常任委員会委員,建設マネジメント委員会委員,構造工学委員会委員及び構造工学論文集編集委員会部門主査や日本コンクリート工学協会九州支部学術研究委員会主査を務めるなど,土木工学分野への貢献も大きい.プレストレストコンクリート工学会の論文賞,土木学会のグッド・プラクティス賞や2022年度インフラメンテナンスマイスター賞,また工学教育関連としては日本工学教育協会の工学技術賞,国土技術センター国土技術開発賞二〇周年記念創意開発技術大賞も受賞している.さらに,日本学術振興会の科学研究費審査委員としての表彰も受けている.
 以上のように,インフラ維持管理に関わる実験力学分野の学術・技術の進歩,人材育成および学会の企画・運営に大きく貢献しており,特別賞(功績賞)に値する.

論文賞 2件

涌井 隆(日本原子力研究開発機構),山崎和彦(茨城大学),二川正敏(日本原子力研究開発機構)

受賞論文:放射線遮へいガラスの微小塑性挙動に及ぼすレーザー照射の影響, 実験力学 Vol.22, No.2, pp.96-104 (2022年6月)
授賞理由:レーザー切断は,閉空間にある対象物に対して,遮へいガラス越しに加工することが可能であり,原子炉や放射化機器・設備の解体作業等において有用な方法であるが,レーザー照射による遮へいガラスの破壊メカニズムの解明が急務となっている.本論文では,微小押し込み試験法に基づいた新たな手法を提案し,遮へいガラスの機械的特性を評価した.具体的には,微小押し込み試験の圧子下の変形過程に微小塑性挙動が含まれることに着目し,塑性流動に関する新たな指標を定義して,有限要素法を援用した逆解析により定量評価できるようにした.そして,機械的特性に及ぼす鉛含有量およびレーザー照射の影響を明らかにし,遮へいガラスの損傷メカニズムに関する新たな知見を得ている.
 本論文で提案された評価技術および得られた知見は,今後の廃炉技術の開発や他の脆性材料の損傷メカニズム等の解明にも寄与でき,学術的・工業的な観点から優れた成果であることから,論文賞に値する.
 

藤川俊秀(都城工業高等専門学校),江頭 竜(福岡工業大学)

受賞論文:非循環型キャビテーションタンネルによる水中での気泡核成長の実験と動的閾値, 実験力学 Vol.22, No.4, pp.246-254 (2022年12月)
授賞理由:本論文は,水中でのキャビテーション発生における気泡核の役割と気泡核成長の動的閾値について,実験,計算流体力学(CFD)解析,CFD流れ場での気泡力学解析および著者らが提案している動的閾値理論により検討したものである.すなわち,非循環型キャビテーションタンネル内で発生した弱い局所的張力場で,液単相状態の水の中の気泡核が成長し可視化できる大きさにまで成長する過程に着目してキャビテーション発生の実験をおこない,実験条件下でのCFD解析により観測部の流れ場を明らかにし,この流れ場での気泡力学に基づいて気泡核の役割と成長メカニズムを解明したものである.
 本論文で提案された評価技術およびそれによって得られた結果は,種々の流体機械の設計に応用できる普遍的な知見であり,学術的・工業的な観点から優れた成果であることから,論文賞に値する.
技術賞 1件

永田 將(茨城大学大学院),三宅修吾(神戸市立工業高等専門学校),五十嵐誉廣(日本原子力研究開発機構),太田弘道(茨城大学大学院),西 剛史(茨城大学大学院)

受賞研究:オフセット周期加熱法による一方向炭素繊維複合材料の熱拡散率特性評価, 実験力学, Vol.22, No.2, pp.105-111 (2022年6月)
授賞理由:本技術は,サブミリスケールの高空間分解能で各種素材や接合構造体の熱的異方性を非接触で計測・評価できる技術であり,半導体デバイスや電子機器などの熱設計の高精度化に資するものである.この技術の基となる周期加熱法は,強度変調したレーザー光による加熱位相と一定距離離れた検出位置における温度応答の位相差から熱拡散率を計測する方法であるが,等方均質体モデルによる熱伝導を仮定していることから,グラファイトシートや炭素繊維複合材料などの異方性材料の面内方向の熱拡散率を正確に評価することが困難であった.著者らは熱的異方性を定量的に観測するための基礎的検討と具体的手法を考案し,一方向性炭素繊維複合材料を用いて繊維配向性と熱的異方性を関連付ける技術を開発した.
 本技術は,自動車電装機器,情報端末,高輝度LED照明などの各種産業分野で幅広い応用が期待できることから,技術賞に値する.
学生研究奨励賞 1件

清瀧 亮(富山県立大学)

受賞研究:Reduction in Horizontal and Vertical Vibrations by Dynamic Absorber Using Elliptical Shaped Magneto-Rheological Elastomer, AEM Vol.7, pp.123-129 (2022年)
授賞理由:本研究は,磁気応答性材料を用いた振動低減装置を考案,設計,製作し,一般的な振動体や自動車のエンジン振動を対象に振動低減効果について検証したものである.従来の1方向のみの制振機構に対して,磁気応答性材料の形状を工夫することにより2方向の振動を効果的に制振できることを明らかにした.さらに,従来の機構に比べて重量の増加はなく,消費電力の増加は10%程度に抑えられ,重量,コスト,消費電力の面でバランスの取れた機構となっている.
 清瀧 亮氏は,大学3年次からこの研究に真摯に取り組んできた.また,更なる装置の高機能化に向け,発電機能や装置の小型化に関する研究にも取り組んでいる.これら一連の研究成果の発表について,英語による発表が4件(うち1件は本人登壇),日本語による発表が12件(うち6件は本人登壇)ある.また,英文による査読付き論文が2編(いずれも本人が第一著者),国際会議のプロシーディングス論文が2編ある.さらに,テクノアイデアコンテスト・テクノ愛2021(公益財団法人 京都技術科学センター)で奨励賞を受賞するなど,その成果は顕著であり,学生研究奨励賞に値する.
 

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Last Updated Sep. 28, 2023