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2026年度学会賞の選考結果

特別賞(功績賞)1件

塩見洋一(龍谷大学・教授)

授賞理由
 塩見洋一 氏は,機械工学分野の流体工学および熱工学を専門とし,30 年以上にわたり先進的な研究を展開してきた.特に,気体・液体・固体が混在して流                      れる混相流の流動特性の解明を中心に研究を進めてきた.さらに,熱流体の数値シミュレーションと流れの可視化・画像計測を組み合わせ,実験と解析の両面から熱流 体現象の評価を行っている.気液二相流における騒音抑制や,温度調節システムの省エネルギー化に向けた流れの最適化など,社会実装を視野に入れた研究にも積極的  に取り組んでいる.
 このように,混相流の流動現象や熱流体工学の研究を通じて,気液二相流の流動特性や熱輸送機構の解明に大きく貢献してきた.また,数値シミュレーションと実験可視化技術を融合した研究により,冷却機器やエネルギー機器の高性能化および省エネルギー化など,産業応用にも尽力している.これらの成果は,国際的に評価の高い学術誌であるExperimental Thermal and Fluid Scienceなどに原著論文として多数掲載されている.さらに,日本実験力学会の学術論文誌Journal ofJapanese Society of Experimental Mechanics にも,「Turbulent Characteristics in a Taylor-Couette Flow(2011)」,「Flame Propagation and Fractal Dimension in a Concentric Double Cylinders Apparatus(2014)」などの論文が掲載されており,熱流体工学分野における実験力学的アプローチの有用性を示す成果が公表されている.また,実験力学会年次講演会や分科会合同ワークショップにおいても多数の研究成果を発表し,実験的手法による熱流体工学の発展に寄与している.
 日本実験力学会においては,2012 年度から2024 年度まで評議員を務め,2017 年度から2020 年度には特任理事(情報通信)としてメーリングリストを活用した情報発信を推進し,会員専用Webページを介した情報提供を可能とするシステムを構築した.2021 年度には学会副会長,2022 年度および2023 年度には学会会長を歴任し,実験力学分野の学術活動の進展と産業応用の拡大に大きく貢献した.また,The 5th International Symposium on Advanced Science and Technology in ExperimentalMechanics のCo-Chairperson,International Workshop on Advanced Experimental Mechanics for Studentsand Young Researchers 2024 (IWAEM’24)のChairman,2025 年度年次講演会実行委員長などを担当し,学会主要イベントの開催に対して献身的な協力を続けている.
 以上のように,熱流体工学と実験力学の融合領域における研究者として,塩見洋一氏の本学会に対する寄与は極めて大きく,学会運営にも多大な貢献を果たしており,その功績は,実験力学会の特別賞(功績賞)に値する.

特別賞(貢献賞) 1件

森きよみ(拓殖大学・教授)

授賞理由
 森きよみ 氏は,固体力学,材料強度学および機械設計工学を専門とし,30 年以上にわたり独創性を有する研究を展開してきた.機械部品の接合部の強度設計,とりわけ接着剤や粘着剤の機能性を,実験的手法と数値解析を組み合わせて体系的に明らかにしてきた.さらに,高温環境で使用される耐熱材料の弾性率や強度,接合部の破壊強度など,機器設計に不可欠な力学的特性の定量化を精力的に進め,接着接手の安全性と信頼性の向上に貢献するなど,産業応用の発展に資する成果を挙げている.
 これらの研究成果は,日本接着学会の学術雑誌に多数掲載されており,「耐熱性無機接着剤を用いた継手の応力解析および熱劣化の評価(2024)」,「構造用金属ラップ接着継手の強度設計のための接着強度試験法(2020)」,「リン酸アルミニウム系無機接着剤の高温ヤング率に及ぼす熱処理の影響(2017)」など,接着剤の高機能化に向けた実験力学的評価手法の有用性を示す研究成果として高く評価されている.また,「Journal of Japanese Society of Experimental Mechanics」や「実験力学」にも,無機系接着剤の高温力学特性評価や複合材料の物性評価に関する論文が継続的に掲載されており,固体力学,材料強度学,機械設計工学における実験力学的アプローチの重要性を学術界のみならず産業界にも広く発信し,その普及と発展に尽力されてている.さらに,実験力学会年次講演会や分科会合同ワークショップにおいても数多くの研究成果を発表し,実験的手法による接着強度評価の発展に尽力されている.
 日本実験力学会においては,2007 年度から現在まで評議員を務め,2006 年度および2007 年度には特任理事として学会運営に貢献した.また,2005 年度から2021 年度には他分野交流分科会の主査として,多様な分野の研究者・技術者が議論できる場を継続的に提供し,分科会活動の発展に大きく寄与した.さらに,2009 年度年次講演会では実行委員会幹事として運営の中心的役割を担い,学会活動の円滑な遂行に貢献した.以上のように,森きよみ氏は,実験力学的手法を基盤とした固体力学分野の研究において優れた業績を挙げるとともに,本学会の学術的発展および企画運営に長年にわたり多大な貢献を果たしてきた.その功績は,実験力学会の特別賞(貢献賞)に値する.

論文賞  3件

受賞研究:Crack Identification and Strain Evaluation from Displacement Fields Measured Using Digital Image Correlation, AEM, Vol.10, pp.33-39(2025 年8 月)

授賞理由
 本論文は,き裂面では変位が不連続になり,さらにき裂先端近傍ではひずみが急激に変化することから,画像相関法により得られた変位場からひずみ場を得ることが困難であるという従来の課題に対し,明確な解決策を提示したものである.従来,画像相関法を用いた破壊の研究では,き裂面およびき裂先端近傍のデータは除外されることが多かったが,本論文ではこの困難を克服するため,変位分布や相関係数を利用したき裂位置の検出,ひずみ窓領域からのき裂面近傍データの除外,高次多項式を用いたひずみ急変部(き裂先端部)におけるひずみの算出等の方法により,き裂先端およびき裂面近傍でのひずみ評価を可能とする手法を提案している.さらに,この方法を3 種類の実測データに適用し,提案手法の有効性および現実の測定データに対する適用可能性を示しており,従来困難であった評価を実現した点で,測定・評価技術の進歩に寄与している.
 本論文で示された手法は,画像相関法による破壊評価の精度向上に有用な知見を与えるものであり,着想の独創性と手法の妥当性が適切に示されている.以上より,本論文は論文賞に値する.

受賞研究:エポキシ系接着接合体の強度特性と破壊形態に及ぼすひずみ速度と負荷モードの影響,実験力学, Vol.26, No.1, pp.9-15(2026 年3 月)

授賞理由
 本論文は,エポキシ系接着接合体を対象として,ひずみ速度および負荷モードが接着強度と破壊形態に及ぼす影響を,実験および数値解析の両面から体系的に解明したものである.準静的試験に加えてスプリット・ホプキンソン棒(SHB)法を応用した高ひずみ速度試験を実施し,引張およびせん断負荷条件下における接着強度のひずみ速度依存性および負荷モード依存性を明確に示すとともに,高ひずみ速度引張時にはボイド生成を伴う特徴的な破壊形態が生じることを示している.さらに,分子動力学シミュレーションにより分子鎖の変形挙動を解析し,結合伸縮や結合角変形といった分子レベルの変形機構が強度特性や破壊挙動に与える影響を詳細に考察している.
 本論文は,実験力学的手法と分子シミュレーションを融合させて接着強度発現機構を多階層的に解明した点は独創性および新規性に富み,接着接合体の強度設計に有用な知見を提供するものである.これらの成果は,実験力学分野における測定・評価技術の発展にも寄与するものであり,論文賞に値する.

受賞研究:Thermodynamics of Formation of Mg2Si Inter-metallic Compound for Si Removal from Molten Al-Mg Alloy, 実験力学, Vol.25, No.4, pp.200-207(2025 年12 月)

授賞理由
 本論文は,アルミニウムのリサイクルにおいて大きな課題となっているSi の除去に対し,Mg を添加することで溶融Al 中のSi をMg₂Si として晶出・分離する手法を提案したものである.溶融Al–Mg 合金をMg₂Si と平衡させてSi の溶解度を精密に測定し,熱力学解析に基づいて,溶融Al–Mg 合金中のMg 濃度および温度を変数としたSi 濃度低減の限界を体系的に明らかにしている.
 その結果,本除去法により823 K,35.9%Mg の条件下でSi を0.14%まで低減可能であることを示し,アルミニウムリサイクルにおけるSi 除去技術として極めて高い有効性を有することを実証した.これらの成果は,従来困難とされてきたSi 除去プロセスに対し,熱力学的根拠に基づく明確な指針を与えるものである.
 本論文は,Si 除去技術の確立に向けて重要な知見を提示しており,Mg₂Si 晶出を利用した着想の独創性に加え,その成立性を実験および熱力学解析の両面から裏付けており,論文賞に値する.

学術奨励賞  1件

元師弘(青山学院大学)

受賞研究:Comparation of Polyethylene and Polypropylene on the Time-Temperature Superposition Principleby Molecular Dynamics Simulations, AEM, Vol.10, pp.27-32(2025 年8 月)

受賞理由
 元師弘 氏は,分子動力学(Molecular Dynamics, MD)シミュレーションを用いた高分子材料の粘弾性挙動解析に関して,時間–温度換算則(Time-Temperature Superposition Principle, TTSP)の成立メカニズムを分子レベルから解明する研究を継続的に推進してきた.ポリエチレンおよびポリプロピレンを対象とした系統的なクリープ挙動の解析により,温度変化に伴う自由体積分布や分子鎖構造の変化が粘弾性応答に与える影響を明確に示し,TTSP の適用性と材料構造依存性に関する分子論的理解を大きく前進させている.また,温度だけでなく,圧力条件下でのクリープ挙動の変化についても解析し,高分子材料の時間依存性と分子構造の関係解明に資する知見を提供している.
 これらの成果は,高分子材料の長期信頼性評価や材料設計に対して極めて有用な知見を与え,分子シミュレーションと実験力学を結び付けて粘弾性解析の発展に大きく寄与するものであり,学術奨励賞に値する.

学生研究奨励賞  1件

村上大志(摂南大学)

受賞研究:反射率温度依存性を用いた2波長レーザー光反射強度計測による非接触温度測定の 高感度化, 実験力学, 25 巻, 1 号, pp.29-32(2025 年3 月)

受賞理由
 村上大志 氏は,発熱密度が急速に増大するAI 半導体および自動車用パワーデバイスにおける高精度放熱設計の基盤となる微小領域の温度計測技術の高度化に取り組み,金属反射率の温度および光波長依存性に着目した独自のサーモリフレクタンス計測手法を構築した.2 波長レーザーを用いた新規光学系を自ら設計・実装し,金薄膜を対象とした実測と数値計算を組み合わせた検証で,計測原理の妥当性と特性を明確に示している.その結果,従来手法を大きく上回る計測感度の向上と測定不確かさの低減を同時に実現し,高空間分解能を有する非接触温度計測技術の発展に重要な知見を示している.また,当該分野における継続的かつ精力的な研究活動も顕著である.
 これらの成果は,半導体熱設計の高度化に不可欠な基盤技術の創出に寄与し,非接触温度計測の学術的理解を深め,将来の応用展開を拓く可能性を示しており,学生研究奨励賞に値する.